抄録
本稿では,構造的トピックモデルを導入し,異なる作家によって書かれた『明暗』と『続明暗』からトピックを抽出し,その推移・変化の状況を考察した.その結果,原作と続編の内容にマッチしたトピックがそれぞれ得られ,二作品における内容・話題の変動様態が直観的に示された.分析により,『続明暗』の作者水村美苗が文体を夏目漱石の『明暗』に合わせて執筆しているものの,ストーリーの展開に想像力を発揮し,個性を見せていると推察する.今回の分析を通して,トピックモデルよる小説トピックの変動検出の適用可能性及びその有効性が確認された.