2021 年 33 巻 1 号 p. 28-39
データには質的データと量的データがあるが,それとは異なる視点として,計量的な見方と非計量的な見方がある.本稿では,計量的な見方による日本語研究がどんなものであるか,用例調査,コーパス,多人数質問調査などを例にして,その概略を述べた.また,計量的な研究が現代日本語学で多く行われていること,そのような研究は,幅広い学問領域に共通の研究のしかたであることを述べた.統計学とはどんなものか,記述統計学,推測統計学,探索統計学に分類してそれぞれについて解説した.さらに,統計学的な見方と計量的な見方の関係について,統計学が理論的,基礎的なデータ分析方法を追及するのに対し,計量的な研究は応用的,実践的なデータ分析を志向するという立場から述べた.計量的な言語研究を目指す上では,調査が重視されるが,その際のポイントとして,調査計画の重要性と調査結果の解釈の重要性を述べた.