2022 年 33 巻 7 号 p. 510-525
本稿では,叙述語を指標に,コレスポンデンス分析,クラスター分析を用いて鎌倉時代の和文作品,並びに和漢混淆文の一種とされる軍記物作品の文体が類型的にどのように位置づけられるのかについて,大川(2020)の結果との比較から考察した.その結果,鎌倉和文は紀行文和歌集型と強紀行文和歌集-和文体型に分けられ,さらに大川(2020)にて強紀行文和歌集型とされた『海道記』は強紀行文和歌集-漢文訓読文寄りの文体型に位置づけられること,軍記物は物語日記-漢文訓読文寄りの文体型に位置づけられ,『今昔物語集』などの作品と,和漢の文体対立から見たときにも,ジャンル文体から見たときにも概ね同様の文体的特徴を有することが明らかとなった.