日本語の文章の文体特徴を品詞構成の観点から計量化した指標としてMVR(Modifier-Verb Ratio)が広く用いられている.このような指標によって捉えられた特徴は,読者が文章を読んで抱く印象とどのように関わるのだろうか.本研究では,MVRおよび品詞構成率と主観的印象との関係を質問紙調査によって検討した.マルチレベルモデルによる分析の結果,名詞率と動詞率は登場人物や場面のイメージしやすさの印象に負の影響を及ぼすが,形容詞・副詞類の割合はイメージしやすさに寄与しなかった.文ごとの品詞構成率を説明変数とすることによって品詞間の交互作用が明らかになり,形容詞・副詞類が多いほどイメージが浮かびやすくなるのは特定の品詞構成の組み合わせが成立した特殊な場合であることが示唆された.一方,展開の早さの印象については,本研究で扱った範囲では有望な説明変数を見出せなかった.品詞構成と文体の印象との関係について考察し,文ごとの品詞構成に着目することの意義,分析概念の再考について論じた.