2026 年 35 巻 4 号 p. 177-192
本研究は,中国の大学におけるパラグラフ・ライティング活動を通じ,日本語学習者の語彙産出の縦断的変化を量的・質的に可視化し,加えて人間教師と生成AI(ChatGPT・DeepSeek)による評価の一致度を比較検討したものである.語彙産出の量的変化として,使用語数の増加が見られ,特に一文あたりの語彙密度が高まるという表現の多様化が確認された.一方,質的評価では,人間教師は最も幅広く柔軟な評価を示し,個々の学習者の語彙使用や感情表現を多面的に捉えていた.これに対し,ChatGPTは慎重かつ保守的な評価傾向を示し,DeepSeekはやや人間教師に近い傾向を持ちながらも柔軟性に欠けた.これらの結果は,語彙の「質」の向上が単純な「量」の増加には比例せず,学習者が語の産出を通じて自己表現を試行錯誤する非線形的な過程であることを示唆する.語彙教育においては,生成AIの定量的評価の利点を活かしつつ,学習者の内的成長や表現の豊かさを汲み取る人間教師の共感的かつ柔軟な支援の重要性が改めて示された.