抄録
前立腺癌に対する放射線治療はここ数年で大きな技術的進歩をとげ、治療成績が向上している。特に強度変調放射線治療(Intensity Modulated Radiation Therapy ; IMRT)といった手法が注目されているが、複雑なコンピューター計算が必要であり、まだ一般病院での普及は十分ではない。今回我々は従来の照射装置をそのまま利用し、IMRT に匹敵する線量分布を持つ照射方法を考案・施行したので、その初期経験を発表する。 患者は2007 年8 月~ 2008 年4 月に前立腺癌局所に対し放射線治療を施行した13 症例。年齢は61-77 歳(中央値70)。病期はT2:10 例、T3:3 例で全例N0。初期PSA は4.3-77.2ng/ml(中央値9.4)。ホルモン療法併用6 例、非併用7 例。観察期間は2-10 ヶ月(中央値6)。 照射方法は回転照射1 門に左右対向固定2 門照射を組み合わせた計3 門照射とし、三次元的に線量分布を作成した。総線量70Gy/35 回の照射を行なった。 結果として、全例が休止なく治療を完遂できた。治療後に全例PSA 値低下を認めた。現在まで重篤な有害事象を認めていない。線量分布比較で固定5 および7 門照射と比べ直腸線量を減少させる点で優れていた。回転+固定門照射は前立腺治療の選択肢の一つとなり得る。