抄録
2009 年10 月から2010 年3 月までの期間において新型インフルエンザの診断で松江市立病院(以下当院)小児科に入院した症例に関して臨床的検討を行ったので報告する。期間は2009 年10 月1 日から2010 年3 月31 日までで、対象は当院小児科入院した患者のうちインフルエンザ迅速テストA 型陽性で、流行状況から新型インフルエンザと診断された36 例(男子22 例、女子14 例)である。入院した患者の年齢は日齢14 から15 歳までで平均4.3 歳であった。入院した患者の年齢分布は1 歳未満25%、1 歳~6 歳47%となり、同期間のインフルエンザ迅速テストA 型陽性外来患者の年齢分布(1 歳未満1.6%、1 歳~6 歳36%)に比べて明らかに低年齢の割合が高かった。発症から入院までの時間は平均28.4 時間、治療開始後下熱するまでの時間は平均31.8 時間、有熱時間は平均58.4 時間、入院期間は2 日間から7 日間までで平均3.3 日であった。入院理由は咳嗽、喘鳴、呼吸困難などの呼吸器症状28%、けいれん、せん妄などの神経症状31%、嘔吐、下痢などの消化器症状11%、低年齢や保護者の希望などその他の理由30%であった。抗インフルエンザ薬はほぼ全例使用しており、オセルタミビル(タミフル®)が81%、ザナミビル(リレンザ®)が16%であった。インフルエンザ脳症や人工呼吸管理を必要とする症例はなかったが、急速に進行する呼吸困難を呈した新型インフルエンザ患者を経験した。インフルエンザ流行シーズンにおいて急速に進行する低酸素血症を伴う肺炎、無気肺、気管支喘息発作を診断した際には、発症早期におけるインフルエンザ迅速テストが陰性でも新型インフルエンザを念頭におき治療する必要があると考えた。