松江市立病院医学雑誌
Online ISSN : 2434-8368
Print ISSN : 1343-0866
15 巻, 1 号
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  • 徳田 佳生, 福永 典子, 吉野 陽三, 藤本 一夫
    2011 年 15 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/07/23
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    当院でリハビリテーション(以下リハ)科に紹介となった廃用症候群患者の現状と転帰を検討し、看護ケアの重要性について考察した。対象は平成19 年度から3 年間にリハを実施した廃用症候群患者とし、リハ依頼科、原因疾患群、退院先、入院前および退院時移動能力とその変化(ADL 変化)を後方視的に調査した。また平成19 年度においては、廃用症候群以外に骨折群(胸腰椎圧迫骨折と大腿骨近位部骨折)および脳卒中群を対象に、入院期間、入院からリハ開始までのリハ開始前期間、リハ開始後退院までのリハ開始後期間および自宅退院率を調査し、3 群間で比較した。3 年間の対象件数は347 例で、平均年齢は77.5±11.2 歳、男性203 例、女性144 例であり、平成19 年度135 例、20 年度122 例、21 年度90 例と漸減していた。退院先は自宅180 例(52%)、施設48 例(14%)、転院52 例(15%)、死亡67 例(19%)であり、依頼科別では緩和ケア科で死亡が73%と高かった。移動能力は、独歩が入院前140 例から58 例に著減し、反対にベッド周辺生活が23 例から50 例、ベッド上生活が16 例から39 例へ増加していた。ADL 変化は病前不明と死亡を除くと、悪化~やや悪化が132 例、不変が127 例、改善~やや改善が9 例であり、原因疾患群別にみると、癌末期、心不全、癌治療、消化器疾患が不良であった。廃用症候群は骨折群および脳卒中群より入院期間は長かったが、リハ開始後期間には有意差はなかった。自宅復帰率は骨折群75.6%、廃用症候群69.8%、脳卒中群61.7%の順となった。平成19 年度の廃用症候群において、リハ開始後期間はリハ開始前期間の約1.5 倍を要していたが、両期間の順位相関係数は0.253 と低かった。廃用症候群は治療上の合併症であり今後も減少することが望ましいが、そのためには廃用防止の看護ケアが重要である。
  • 神田 貴行, 岡本 学, 辻 靖博, 田中 雄二
    2011 年 15 巻 1 号 p. 11-14
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/07/23
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    2009 年10 月から2010 年3 月までの期間において新型インフルエンザの診断で松江市立病院(以下当院)小児科に入院した症例に関して臨床的検討を行ったので報告する。期間は2009 年10 月1 日から2010 年3 月31 日までで、対象は当院小児科入院した患者のうちインフルエンザ迅速テストA 型陽性で、流行状況から新型インフルエンザと診断された36 例(男子22 例、女子14 例)である。入院した患者の年齢は日齢14 から15 歳までで平均4.3 歳であった。入院した患者の年齢分布は1 歳未満25%、1 歳~6 歳47%となり、同期間のインフルエンザ迅速テストA 型陽性外来患者の年齢分布(1 歳未満1.6%、1 歳~6 歳36%)に比べて明らかに低年齢の割合が高かった。発症から入院までの時間は平均28.4 時間、治療開始後下熱するまでの時間は平均31.8 時間、有熱時間は平均58.4 時間、入院期間は2 日間から7 日間までで平均3.3 日であった。入院理由は咳嗽、喘鳴、呼吸困難などの呼吸器症状28%、けいれん、せん妄などの神経症状31%、嘔吐、下痢などの消化器症状11%、低年齢や保護者の希望などその他の理由30%であった。抗インフルエンザ薬はほぼ全例使用しており、オセルタミビル(タミフル®)が81%、ザナミビル(リレンザ®)が16%であった。インフルエンザ脳症や人工呼吸管理を必要とする症例はなかったが、急速に進行する呼吸困難を呈した新型インフルエンザ患者を経験した。インフルエンザ流行シーズンにおいて急速に進行する低酸素血症を伴う肺炎、無気肺、気管支喘息発作を診断した際には、発症早期におけるインフルエンザ迅速テストが陰性でも新型インフルエンザを念頭におき治療する必要があると考えた。
  • 岩田 綾子, 和田 清, 曽根 啓司, 南京 貴広, 小田川 里美, 石原 修二
    2011 年 15 巻 1 号 p. 15-18
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/07/23
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    当院のマンモグラフィ撮影装置は2010 年2 月に従来使用していたImaging Plate(以下IP)によるcomputed radiography(以下CR)システムからFlat Panel Detector(以下FPD)によるFull-FieldDigital Mammography(以下FFDM)システムへ更新された。そこでマンモグラフィで重要とされるコントラスト検出能の視覚評価をマンモグラフィ専用ファントム(Contrast Detail Mammographyファントム:以下CDMAM ファントム)を用いて行った。フィルム出力による視覚評価を行い、今回使用した撮影条件ではFFDM システムの方がCR システムよりコントラスト検出能が優れていることが分かった。
  • 南京 貴広, 石倉 誠, 織部 貴広, 石原 修二
    2011 年 15 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/07/23
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    近年、放射線治療は大きな技術的進歩を遂げたと同時に、複雑かつ多様な装置、コンピューターを使用する機会が増加した。しかし高度な機器を使用するにあたっては、誤照射事故防止のために品質管理の実施は避けて通ることはできない重要な項目となってきている。放射線治療の重要な品質管理項目のひとつにモニタ単位数(以下MU 値)の検証がある。今回、治療計画装置にて算出されたMU 値の検証を行うため、治療計画装置とは独立したパソコンに付属されている表計算ソフトExcel を使用し、手計算による独立MU 値計算システム(以下手計算システム)を作成した。手計算システムの精度の検討を行うため、治療部位ごとに治療計画装置と手計算システムにて算出されたそれぞれのMU 値の誤差を求めた結果、乳房において誤差とばらつきが最も大きくなった。乳房に対しては水ファントムによる実測等の他の検証も行っていく必要があると考えられた。
  • 本田 由香理, 石倉 麻衣子, 勝部 厚子, 船越 美鈴, 赤江 壽美子
    2011 年 15 巻 1 号 p. 25-34
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/07/23
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    本研究は、救急外来における看護師のストレスの実態を明らかにすることを目的とし、救急外来勤務の看護師15 名を対象にフォーカスグループインタビューを行って、質的帰納的分析を行った。その結果、救急外来における看護師のストレスとして、【命を預かる重責感】【自信が持てない】【手が回らない】【待たせる焦燥感】【トラウマ的な体験】【順応しづらい状況】【救急外来専属医師の不在】【関連スタッフとの連携の困難さ】【患者モラルの低下】【準備体制不足】【構造上の問題】の11 個のカテゴリーと27 個のサブカテゴリーに分類できた。また、これらストレスを緩和する方法として、「看護師同士の体験を共有する場をつくる」「情報共有の徹底」「医師を交えたカンファレンス」「救急外来としての決まりを明確にする」「一般外来との連携強化」「勤務開始時のオリエンテーションの充実」などが示唆された。
  • ~より効果的な運用にむけて~
    樋原 悦子, 細田 祥代, 小笹 千秋
    2011 年 15 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/07/23
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    亜急性期病床では、嚥下訓練が行われている患者に対して、摂食機能療法が実施されている場合がある。しかし、本当に役に立っているのか、評価基準が記録者によって異なっているのではないかという意見があり再評価することとした。そこで、看護師に摂食機能療法に対しどのような思を抱いているのか調査した。結果は実施してきて良かったと言う意見と、問題点として【看護師側要因】【システム上の要因】【運用上の要因】の3 つのカテゴリーと《摂食機能療法の必要性の意識が低い》《誤嚥や嚥下の知識不足》《看護師ぞれぞれで視点や基準が違う》《業務の忙しさにより質が変わる》《電子カルテでは、必要な物が1 つの画面に表示されない》《現在の様式への要望》《定義がはっきりわからない》《誰が開始と終了を判断するのかわからない》《評価が出来ていない》《通常の看護記録との関連が薄い》《評価に際し、基準が決まっていない》《他職種への要望》の12のサブカテゴリーが抽出された。抽出された問題点より、開始・終了の基準を明確にする、経過表の評価基準を明確にする、患者個々での評価基準を考えるなどの運用方法を改善することで摂食機能療法をより効果的に行えると考えられた。
  • 佐伯 由美子, 石原 研治, 大谷 裕, 嘉本 道子
    2011 年 15 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/07/23
    ジャーナル オープンアクセス
    当院では2008 年4 月からカルバペネム系抗菌薬、linezolid(LZD)の届出制を導入し、2010 年3月からはTherapeutic Drug Monitoring(TDM)を必要とする抗菌剤の使用届を導入した。さらに2010 年10 月からLZD の届出制を許可制に変更し抗菌薬適正使用に取り組んでいる。今回、使用量:antimicrobial use density(AUD)、耐性菌の検出状況から届出制による効果を検討した。届出制を導入した2008 年はカルバペネム系抗菌薬とLZD のAUD は減少した。その後、カルバペネム系抗菌薬のAUD はやや増加傾向を認めたがほぼ横ばいであった。一方、LZD のAUD は2009 年に大幅な増加を認め、2010 年には減少した。多剤耐性緑膿菌(MDRP)は2008 年から2010 年の間に2 名の検出にとどまった。一方、ESBL産生菌の出現が2008 年に認められ2009 年にかけ増加した。届出制導入によってカルバペネム系抗菌薬のAUD が減少し、耐性菌のコントロールに効を奏した。また、ニューキノロン系抗菌薬の使用量の増加がなかったことも耐性菌出現の抑制に影響したと考える。一方、第3 世代・第4 世代セフェム系抗菌薬に耐性を示すExtended Spectrum β-Lactamase(ESBL)産生菌の検出については、今後、院内持ち込み率の調査を行い、第4 世代セフェム系抗菌薬の届出制導入の必要性を検討するべきと考える。また、市中ESBL 産生菌の動向と食肉の感染経路などの解明もコントロールの手段の糸口になると考える。
  • 金本 香織, 小西 由紀恵, 生間 悦世
    2011 年 15 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/07/23
    ジャーナル オープンアクセス
    1 泊2 日入院で前立腺生検を初めて受ける患者10 名を対象に、検査を受ける上での不快な思いについてインタビュー調査を行い、質的帰納的に分析した。内容分析の結果、【羞恥心】【慣れない看護師との関係】【前立腺生検をうけることで起こるつらさ】【ルーチン化した看護師の対応】の4 つのカテゴリーと、《どうすることも出来ない恥ずかしさ》《看護師への申し訳なさ》《イメージ出来ない体験への不安》《尿が出そうで出ない》《動けない》《もうちょっとの気遣いがほしい》《行き過ぎと思える介入》の7 つのサブカテゴリーに分類できた。患者の不快な思いは現病歴、今まで受けてきた医療行為によっても影響を受けることや、患者には初対面の看護師へは、言いづらい思いを抱えていることがあり、看護師はそのことを認識し、患者に関わっていくことが必要である。また、ルーチン化した観察にとどまらず、看護師が専門的な立場として患者に十分な説明が行えるようにしていき、患者が納得できる関わりを持つことが大切であると示唆された。
  • ―入院・外来・身体合併症の動態―
    大竹 徹, 今岡 雅史
    2011 年 15 巻 1 号 p. 55-62
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/07/23
    ジャーナル オープンアクセス
    松江市立病院精神科における外来、入院の実態を明らかにすることを目的とし、H18 年4 月1日~H22 年3 月31 日の期間に受診もしくは入院した患者を対象として、電子カルテによる統計処理をもとに患者動向を後方視的に調査した。特に身体合併症に対する関与、院内他科との連携、他院からの紹介状況、精神科救急の現状を明らかにするために、H21 年度(H21 年4 月1 日~H22 年3 月31 日)の期間について詳細な分析を試みた。H21 年度の精神科入院患者は249 人、他科入院中に精神科を受診した患者は248 人だった。身体疾患の治療を主目的とし他科が主治医となって精神科病棟に入院した患者は12 人で、精神科病棟入院患者の5%を占めていた。他科から精神科への院内転入院は9 人であった。疾患別にみると精神科入院患者では感情障害と統合失調症が多くほぼ同程度で、他科入院中の精神科受診患者ではせん妄、認知症などの器質性精神障害、感情障害の順に多かった。年齢別にみると精神科入院患者ではどの年齢層も比較的均等に分散していたが、他科入院中の精神科受診患者では高齢者が圧倒的に多かった。他院からの紹介は181 人であったが、そのうち入院は52 人でその3 分の2 が精神科クリニックからだった。救急外来を受診した精神科患者は471 人いたが、このうち入院は46 人で急性薬物中毒が多く、18 人が身体管理を要すために救急病棟への入院となった。8 年前の調査に比べて救急外来を受診する精神科患者は2 倍に増えていた。総合病院の医師不足が危惧される中、院内他科との連携、他院との連携を、機能分担も含め効率よく図ることが求められている。
  • 錦織 優, 藤岡 美和子, 村上 ルミ, 鳥谷 悟
    2011 年 15 巻 1 号 p. 63-66
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/07/23
    ジャーナル オープンアクセス
    インターフェロンが無効の慢性期慢性骨髄性白血病の高齢女性にグリベック治療を行った。常用量の400 mg/日では多彩な副作用が出現したため、300 mg/日投与として継続投与が可能となった。投与6 ヶ月後には細胞遺伝学的完全寛解が得られた。投与36ヵ月後にMajor bcr-abl m RNA 定量が末梢血を用いてAmp-CML で可能となり172 copy/ 0.5μg RNA であった。European LeukemiaNet によれば18ヵ月後にmajor molecular response を達成していることがoptimalとされている。本例はsuboptimal とみなされるがsuboptimal は多様なカテゴリーと考えられ、18 ヶ月suboptimal の症例はoptimal と同様に予後がよいとされている。本例のAmp-CML はその後4 年間も同様の値を示し、現在も反応良好である。しかしoptimal な反応を得るにはイマチニブの血中濃度が低いとも考えられ、将来細胞遺伝学的反応の消失や変異の出現の可能性がある。常用量(400 mg)の服用が勧められるが、患者さんの同意が得られていない。このような例の長期予後については知られていないので、3 ヶ月毎の分子遺伝学的検査を行いながら慎重に経過観察を行っていきたい。
  • 堀 郁子, 飴谷 資樹, 謝花 正信, 南京 貴広, 近藤 康光, 瀧川 晴夫, 谷島 伸二
    2011 年 15 巻 1 号 p. 67-74
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/07/23
    ジャーナル オープンアクセス
    脊髄硬膜外血腫と脊髄硬膜下血腫は、これまで稀な疾患と考えられていたが、画像診断の進歩により早期診断が可能になり報告数も増加している。今回2 例の脊髄硬膜外血腫と脊髄硬膜下血腫1例を経験し、MRI も重要であるが、発見にはCT でも可能であることを確認したので報告した。
  • 武本 啓, 安部 睦美
    2011 年 15 巻 1 号 p. 75-78
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/07/23
    ジャーナル オープンアクセス
    形成外科の診療において、褥瘡は寝たきり高齢者や脊髄損傷患者などで頻繁に遭遇する疾患である。今回、消化器がんの疼痛コントロールのために留置された持続硬膜外カテーテルリザーバーが一因になったと思われる腰部褥瘡を経験した。症例は42 歳女性。直腸腫瘍の肺及び肝転移を認めたため、化学療法を施行していた。肛門部痛のため、オピオイドを使用するも、過量症状を生じ、持続硬膜外カテーテルリザーバーを留置された。創部の抜糸を行ったところ、創が離開し、当科紹介となった。手術により閉創し、術後3 ヶ月経過した後も、再発は認めなかった。
  • 川口 稚惠, 田頭 由紀子, 山内 延広, 高尾 成久, 入江 隆, 吉田 学
    2011 年 15 巻 1 号 p. 79-82
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/07/23
    ジャーナル オープンアクセス
    卵巣癌患者において腹水や胸水の貯留は高頻度にみられるが、癌性心膜炎による心嚢液貯留はまれである。今回、私たちは心嚢液貯留を伴って発見され、全身化学療法が癌性心膜炎に有用であった卵巣癌症例を経験したので報告する。症例は52 歳。呼吸苦と咳を主訴に当院内科を受診。胸水貯留に加えて、骨盤部CT で充実性腫瘤がみられたため、当科へ紹介受診となった。当科初診時、多数の頸部リンパ節腫大を認め、超音波では骨盤内に径10 cm の充実性腫瘤がみられた。胸部CT では両側胸水貯留とともに、著明な心嚢液貯留がみられた。心タンポナーデ症状が著明なため心嚢穿刺を施行したのちに、試験開腹術を行った。病理検査の結果、卵巣漿液性腺がんと診断された。術後にDocetaxel とCarboplatin 併用化学療法(DC 療法)を行ったところ、心嚢液の再貯留は認めず、外来管理が可能となった。転移性の癌性心膜炎に対して、全身化学療法は有用な治療法の一つであると考えられた。
  • 梶谷 真司, 大谷 裕, 岡 伸一, 倉吉 和夫, 河野 菊弘, 吉岡 宏, 金山 博友, 谷村 隆志, 川口 稚恵
    2011 年 15 巻 1 号 p. 83-90
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル オープンアクセス
    腸軸捻転症の中で、盲腸軸捻転症は比較的稀な疾患である。今回われわれは、術前に他の絞扼性イレウスとの鑑別が困難であった盲腸軸捻転症の1 例を経験したので、文献的考察を加え、報告する。症例は42 歳女性。腹痛と嘔吐を主訴に来院。画像上S 状結腸軸捻転症が疑われ、消化器内科へ緊急入院となった。入院後内視鏡的に整復が試みられ、上行結腸まで内視鏡挿入されるもCT で認めた拡張した腸管との連続性ははっきりとしなかった。内視鏡処置後症状がやや軽快したため、保存的治療が開始された。CT 上骨盤内腫瘍が認められたためMRI 検査施行。骨盤内腫瘍は子宮筋腫であり、腸管との連続性は否定されたが、拡張した腸管は小腸と考えられ、腸管の拡張、腹水ともに増悪していたため、索状物による小腸の絞扼が疑われ、当科へ紹介。絞扼性イレウスの診断にて緊急開腹手術を施行した。腹腔内には漿液性透明な腹水が少量認められた。移動盲腸あり、回盲部が反時計方向に約360 度回転した軸捻転の状態になっていた。用手的に捻転を解除するとやや暗紫色であった色調は速やかに回復した。捻転再発を考慮し、回盲部切除を行った。限局した大横径の消化管ガス像を伴う下腹部痛の場合は、頻度的にはS 状結腸軸捻転症が多いが、内視鏡がS 状結腸を通過しても軽快しない場合は、本疾患を念頭に置いた診断と治療が必要であると考えられた。
  • 播磨 裕, 河野 通盛, 谷村 隆志, 杉原 誉明, 村脇 義之, 三浦 将彦, 田中 新亮, 吉村 禎二, 山田 稔
    2011 年 15 巻 1 号 p. 91-96
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は53 歳の女性。平成22 年4 月中旬からの心窩部痛を主訴に近医を受診した。6 月に上部消化管内視鏡を施行され、胃角部大彎に発赤を伴う小隆起性病変を認め、精査目的で当院消化器内科に紹介となった。胃体下部大彎に発赤調の不整なひだ集中像を認めたが、粘膜は色調の変化はあるものの微少構造には変化なく、病変の主体は粘膜下と考えられた。同部位のボーリング生検を8 カ所行ったが、悪性所見は認めなかった。超音波内視鏡検査では粘膜下腫瘍様の形態で、第1、2 層は保たれているものの、第3 層は途絶しており、過去の内視鏡では異常を認めなかったことからも悪性病変が疑われ、腹腔鏡下胃局所切除術を施行した。病理組織学的所見では粘膜下層において、虫体を思わせる構造物とそれを取り巻く好酸球性膿瘍、異物肉芽反応を認めた。虫体を思わせる構造物は変性・壊死に陥っていたが、アニサキスと考えられた。虫体とそれに対する肉芽腫は粘膜下層に限局していた。好酸球性肉芽腫を形成する緩和型アニサキス症は頻度が低く、虫体が粘膜下層に入り込んでおり、上部消化管内視鏡下では確認することは出来ないため、診断上注意が必要である。
  • 松村 正啓, 石倉 信造, 金森 一渓, 扶風 大作, 吉田 剛
    2011 年 15 巻 1 号 p. 97-100
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル オープンアクセス
    患者は63 歳の男性で、口蓋前方部に20×20 mm 大の表面平滑、弾性硬、有茎状で可動性の腫瘤を認めた。静脈内鎮静法下に局所麻酔を用いて口蓋部腫瘤を切除し摘出した。病理組織像より中等度に太くなった膠原線維の増生からなるが、口蓋中央部は刺激を受けにくい部位であり、既往歴から義歯による刺激や習慣による局所の刺激などもなく、腫瘍性の線維腫であると考えた。
  • 芦田 泰之, 松井 泰樹, 野津 長, 石原 和仁
    2011 年 15 巻 1 号 p. 101-104
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル オープンアクセス
    自壊した局所進行乳癌は、浸出液、出血、悪臭を伴うことが多くQOL を低下させる。種々の軟膏や被覆材を駆使して対応しているのが通例であるが、決して満足の得られるものではない。最近、Mohs’ paste を局所進行癌へ応用した報告が相次いでいる。自壊した局所進行乳癌に対してMohs’ paste を使用し、腫瘍容積減少効果とともに浸出液、出血、悪臭に対して非常に有用でQOLを著しく改善したので報告する。
  • 竹野 歩, 多田 裕子, 大國 智司, 谷田 玲, 吉村 禎二
    2011 年 15 巻 1 号 p. 105-108
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/07/26
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は54 歳の女性。非特異的多発小腸潰瘍のため15 年にわたり鉄剤の静脈投与を受けていた。それまで使用していた鉄剤(コンドロイチン硫酸・鉄コロイド)の販売中止に伴い、saccharatedferric oxide(以下SFO;フェジン®)に変更。平成20 年5 月から1 年にわたり定期的にSFO 静脈投与を受けていたところ、両足関節痛、肋骨痛が出現した。検査にて低P 血症( P 1.7 mg/dl)、活性型ビタミンD 低下(1、25(OH)2Vit.D3 19.9 pg/ml)、および骨密度低下(手関節:YAM 38%)を認めた。また骨シンチグラフィにて疼痛部に一致した集積を認め、骨軟化症と診断した。また、血中FGF23 283(10~50)pg/ml と上昇しており、長期にわたるSFO 静脈投与とそれに伴うFGF 23 の高値が骨軟化症の発症に関与したと考え、静注鉄剤の変更、ビタミンD 製剤、カルシウム製剤投与にて症状は改善を認めた。
  • 永井 勝人, 石倉 信造, 松村 正啓, 岩成 信, 大山 護
    2011 年 15 巻 1 号 p. 109-112
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/07/26
    ジャーナル オープンアクセス
    患者は50 歳の男性で、右扁桃癌(T3N2bM0)の診断にて、化学療法、放射線療法および頚部郭清術を行った。術後、経口摂食時に鼻への逆流を認めたため、リハビリ科へ紹介された。嚥下造影検査にて、軟口蓋挙上不全による鼻咽腔閉鎖不全と手術による喉頭挙上不良を認めたため、軟口蓋挙上装置(palatal lift prosthesis:PLP)製作目的にて当科を紹介され受診した。PLP の適応外とされている無歯顎症例であったが、挙上子に可動可能な軟性レジンを用いたモバイル型軟口蓋挙上装置(モバイル型PLP)を製作したところ、挙上子による後縁封鎖や義歯の維持・安定は良好であり、食物や水分の鼻腔への逆流防止効果に患者の高い満足度が得られたため、モバイル型PLP の製作方法を中心に報告した。
  • 濱田 治, 三浦 将彦, 芦田 泰之, 豊嶋 浩之
    2011 年 15 巻 1 号 p. 113-116
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/07/26
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は45 歳、女性。パーソナリティ障害にて近医精神科に入院中に、自殺を企図してタバコ16本を摂取し、当院へ救急搬送となった。来院時意識清明、バイタルサインも安定しており、タバコによる中毒症状は認めなかった。摂取後1 時間以内かつ致死量であり、状況・問診上から胃内には多量のタバコが残存していることが予想された。タバコの葉は固形物であり、溶解させて摘出する胃洗浄は適さないと判断し、内視鏡的異物除去の要領で摘出を試みた。胃内に大量のタバコが残存していることを確認し、回収ネットを用いて直視下で除去した。入院後中毒症状もなく、翌日独歩退院となった。文献で検索した限り、内視鏡によるタバコ除去の報告は認めなかったが、大変有用な方法と考えられたため、報告した。
  • 阿武 雄一, 瀧川 晴夫
    2011 年 15 巻 1 号 p. 117-120
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/07/26
    ジャーナル オープンアクセス
    特発性三叉神経痛は血管により三叉神経後根進入部が圧迫され生じることが多いと考えられている。今回、我々は三叉神経の屈曲により生じたと思われる2 例の三叉神経痛に対し手術を施行し、疼痛発作の完全消失を得たので、報告するとともに、三叉神経痛の神経血管減圧術の注意点につき報告する。
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