松江市立病院医学雑誌
Online ISSN : 2434-8368
Print ISSN : 1343-0866
輪状膵に膵鉤部癌を合併した1 例
寳意 翔太朗石飛 ひとみ加藤 順谷村 隆志村脇 義之三浦 将彦堀江 聡河野 通盛吉村 禎二山田 稔
著者情報
キーワード: 膵癌, 膵頭部癌, 輪状膵
ジャーナル オープンアクセス

2015 年 19 巻 1 号 p. 69-74

詳細
抄録
症例は70 歳,女性.皮膚黄染,全身倦怠感,尿の濃染を主訴に,当科を受診した.CT 検査で膵鉤部に3 cm 大の境界不明瞭な乏血性腫瘍を認め,膵腫瘍による閉塞性黄疸であることが判明した.また,通常の解剖学的位置関係と異なり,膵頭部の実質は十二指腸下行部を全周性に取り囲むように存在していた.内視鏡的逆行性膵胆管造影(endoscopic retrograde cholangiopancreatography;ERCP)では,十二指腸下行部を背側から腹側へ取り巻くように走行する膵管が描出され,輪状膵と考えられた.膵鉤部の腫瘍に対して超音波内視鏡下穿刺術(endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration;EUS-FNA)を施行し,病理組織学的に腺癌であることを確認した.同腫瘍は,上腸間膜動・静脈浸潤に加え,さらに大動脈外膜への浸潤も疑われ,最終的に局所進行切除不能膵癌と判断した.輪状膵は,膵組織が十二指腸を取り囲む稀な先天性の膵形成異常である.さらに,輪状膵に膵癌を合併した報告は非常に少なく,貴重な症例と考えられたため,文献的考察を加え報告する.
著者関連情報
© 2015 松江市立病院
前の記事 次の記事
feedback
Top