松江市立病院医学雑誌
Online ISSN : 2434-8368
Print ISSN : 1343-0866
当院におけるClostridium difficile 感染症に対する内服バンコマイシンの用法用量の変化
野津 渉坪内 敦志酒井 牧子河野 通盛
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ジャーナル オープンアクセス

2019 年 23 巻 1 号 p. 27-29

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抄録
日本では最近までClostridium difficile infection(CDI)治療ガイドラインが存在せず,内服vancomycin(VCM)の添付文書用量にも幅があることから,CDI に対して様々な用法用量でVCM が使用されていた.VCM の必要以上の高用量投与は医療費の増大のほか,消化管障害のある患者では血中濃度上昇による副作用も懸念されている.当院では2012 年以降, Infection Control Team(ICT)と協同してガイドラインの周知やVCM 高用量投与に対する薬剤師からの疑義照会を行い,院内の用法用量を標準化するための活動を行ってきた.本研究では,この介入によりVCM の用法用量が0.125 g 1 日4 回に標準化されたか後方視的に観察し,評価を行った.2012 年から2017 年の調査期間中,CDI に対して内服VCM が処方された入院患者は186 例であった.初期投与量として0.125 g 1 日4 回が選択される割合は2012 年の29.4 %(n=36)から年々増加し,2017 年は88.5 %(n=27)と有意に増加した.VCM の平均投与日数は有意に延長したが,2017年は10.4±4.2 日とガイドラインで推奨されている10 ~ 14 日間に近づいており,CDI 治療が標準化された結果として適正な投与が行われたものと考えられた.2014 年以降,1 症例あたりのVCM平均薬剤費は2012 年と比較して減少傾向を示した.ガイドラインの掲示による周知および疑義照会をICT と薬剤師が協同して行うことにより,CDI治療に対するVCM の用法用量を標準化し,薬剤費の削減にも貢献できる可能性が示唆された.
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© 2019 松江市立病院
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