松江市立病院医学雑誌
Online ISSN : 2434-8368
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脳卒中損傷部位別の筋力とバランス能力及び歩行能力との関係
黒崎  智之上田  正樹福永  典子
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2024 年 27 巻 1 号 p. 1-10

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抄録
【目的】脳卒中患者の下肢筋力と歩行能力に関して,症状別や損傷部位別に検討された報告は少ない.本研究の目的は,脳卒中の損傷部位別の筋力及びバランス能力と歩行能力との関係を明らかにすることである. 【対象と方法】当院で入院中に理学療法を実施した脳卒中患者128例を対象とし,発症後2週前後で非麻痺側及び麻痺側膝伸展筋力,Berg balance scale(以下,BBS),感覚障害や失調症状の有無,自立歩行の可否等を調査した.脳卒中の損傷部位別に大脳皮質群,基底核周囲・放線冠群,脳幹群,小脳群の4群に分類し,それぞれの群において歩行自立群と歩行困難群の2群間比較,非麻痺側及び麻痺側膝伸展筋力とBBSの相関係数の検定,歩行可否を目的変数としたロジスティック回帰分析を行った. 【結果】非麻痺側および麻痺側膝伸展筋力は,大脳皮質群と基底核周囲・放線冠群では歩行自立群が有意に高かったが,脳幹群と小脳群では有意差は無かった.BBSは大脳皮質群,基底核周囲・放線冠群,脳幹群,小脳群とも歩行自立群が有意に高かった.非麻痺側膝伸展筋力とBBS,麻痺側膝伸展筋力とBBSは,大脳皮質群,基底核周囲・放線冠群で有意な正の相関を認めたが,脳幹群と小脳群ではいずれも有意な相関は無かった.ロジスティック回帰分析の結果,大脳皮質群では非麻痺側膝伸展筋力が,基底核周囲・放線冠群では麻痺側膝伸展筋力とBBSが,脳幹群,小脳群ではBBSが有意な因子であった. 【結語】大脳皮質群,基底核周囲・放線冠群では非麻痺側及び麻痺側膝伸展筋力は歩行に重要な要因であると考えられたが,脳幹群,小脳群では非麻痺側及び麻痺側膝伸展筋力が歩行に及ぼす影響は限定的であると考えられた.脳卒中患者の下肢筋力とバランス能力,歩行能力の関係は損傷部位で異なる可能性が示唆され,リハビリテーションはこれらを考慮して実施する必要があると考える.
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