抄録
検診でCEA高値を指摘された34歳男.患者は前頸部に腫瘤を触知する他は多内分泌腺腫瘍を示唆する症状はなかった.CEAは145.8ng/dl,カルシトニンは1600pg以上/ml.超音波検査では甲状腺右葉上極に37×22mmの辺縁不整,内部低エコーで不均一,石灰化エコーのない,血管新生が腫瘍内部で目立つ,後部エコーは不変で外側エコーのない腫瘍エコーを認めた.MRIでは右上極の腫瘤はT1及びT2強調画像とも高信号でGd造影でもよく染り,腫瘤辺縁は不整で,甲状腺内にとどまっていた.術前細胞診にて細胞は,類円形或いは紡錘形で,細胞結合は弱く,細胞集塊は小さく散在しており,核は偏在傾向をしめし,細胞質内には好酸性顆粒を認め,甲状腺髄様癌と診断された.手術は甲状腺全摘,縦隔を含め両側頸部郭清を施行した.癌腫は甲状腺右葉上極を占拠していたが,甲状腺外への浸潤はなかった