抄録
2011年3月11日の東日本大震災で生じた大量の津波堆積物の存在は,被災地の復旧・復興に向けて大きな課題となっている。津波堆積物は事業所等の被災に由来して化学物質等の有害物質を含む可能性もあり,有効利用や処理処分に際してその化学性状の把握が必要である。本稿では,津波堆積物の効率的な化学性状把握に資するため,津波堆積物の化学性状を浸水域の土地利用や施設立地状況から考察した。その結果,有害物質が高濃度で検出された地点はいずれも付近に関連する施設が立地していたことなどがわかり,土地利用や施設立地情報に基づいて津波堆積物の汚染可能性を分類 (ゾーニング) できる可能性が示された。考察に基づいてゾーニングの流れを案として示すとともに,より適切なゾーニングのためには有害物質の流出源となり得る施設の網羅的な把握が重要であること,有害物質存在量等の施設情報整備が課題であることなどを述べた。