2014 年 25 巻 6 号 p. 445-453
スペイン植民地時代のポトシ鉱山において,第五代副王トレド (1569~1581) は銀の抽出に水銀アマルガム製錬法を全面的に採用した。合わせて水力利用を軸とする鉱山都市計画を推進しつつ,従来の製錬法では処理されず廃棄されていた大量の廃鉱石や屑鉱石を原料とするアマルガム製錬を徹底することにより鉱山業の劇的復興を図った。その結果,5 年間で約 200 万ペソの銀を回収することが可能となった。一方,新技術導入後は,反応を終えた混合物の水洗選鉱後の鉱泥から逸失水銀の回収を推進し,年間 2,000 キンタルの回収水銀を再利用に供した。この量は年間消費量のおよそ 30%に相当する量であった。これら当時の廃棄物からの資源回収システムは,現代の循環型社会形成に向けての諸施策に示唆を与えると考えられる。なお,1545 年以降のポトシ鉱山の開発に伴う鉱害要因の中には,現在なお弊害を及ぼしている課題もあり,河川や底泥の重金属汚染がその一例である。