抄録
水銀は有害大気汚染物質の優先取組物質として排出抑制に取り組まれてきたが,規制値はこれまで存在しなかった。水銀に関する水俣条約を確実に,かつ円滑に実施するため,排ガス中の水銀に対する規制が近年議論され,大気汚染防止法が改正された。排ガス中の水銀濃度は一定の変動があることから,平常時における排出口からの水銀の平均的な排出状況を捉えた規制を行うことが妥当とされ,実態調査に基づいて BAT/BAP (利用可能な最良の技術/最良の慣行) を想定した規制値が定められた。廃棄物焼却施設については,水銀を確実に扱う施設とそれ以外で異なる規制値が設定され,前者は新設が 50 μg/Nm3,既設が 100 μg/Nm3 に,後者は新設が 30 μg/Nm3,既設が 50 μg/Nm3 に設定された。ガス状水銀に加え粒子状水銀も測定対象とされ,水銀濃度には変動があることから規制値を上回る水銀濃度が検出された場合,再測定を行った上で複数回の平均値により評価することとなる。