廃棄物資源循環学会誌
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特集:PCB処理の経緯と処理完遂への展望
PCBによる地球環境汚染と今後の課題
高橋 真 田辺 信介
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2017 年 28 巻 2 号 p. 99-111

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抄録

日本等の先進諸国では,1970 年代に PCB の生産と新たな使用を禁止したが,広域汚染やゆくえの解明,廃棄物処理対策等に関しては,現在も多くの課題が残されている。先進諸国における規制の強化と途上国や新興国における産業活動の拡大により,PCB や類縁 POPs (残留性有機汚染物質) の発生源と汚染分布は大きく変化している。熱帯・亜熱帯地域における環境負荷の増大は,地球規模での POPs 汚染を拡大することから,問題解決に向けた国際的な支援と連携が必要である。また,大気・海洋循環を介した長距離輸送によって,その汚染は外洋域等の遠隔地まで拡大し,とくに極域や深海環境は PCB ・ POPs の 「たまり場」 として機能することが示唆されている。生態系においては,野生の高等動物,とくに海棲哺乳類において PCB 汚染は顕在化しており,内分泌系や免疫系への影響がうかがわれる事例も多い。汚染の動向を継続的に監視するとともに,国際的な化学物質管理の適正化に向けた関係機関の協力体制強化が今後の課題であろう。

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© 2017 一般社団法人 廃棄物資源循環学会
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