廃棄物資源循環学会誌
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特集:残留性有機汚染物質 (POPs) 対策の方向性
臭素系ダイオキシン類の毒性評価と排出実態調査
―― 現状と今後の展開 ――
鈴木 剛 仲山 慶前川 文彦Tue Nguyen Minh木村 栄輝道中 智恵子松神 秀徳橋本 俊次
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2018 年 29 巻 6 号 p. 470-481

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抄録

臭素系ダイオキシン類は,POPs 条約の規制対象物質ではないが,対象であるダイオキシン類と同様の特性を示すため,リスク管理の必要性が国際的に共有されている。国内では,環境省による臭素化ダイオキシン類の排出実態調査が実施され,臭素系難燃剤の decaBDE を使用する施設や含有製品を取り扱う施設で,ダイオキシン類の排出基準や作業環境基準を超過する値で検出されることが明らかにされた。臭素化ダイオキシン類の排出は,2017 年に decaBDE が POPs 条約上の廃絶対象物質となったことに伴い,動脈側で減少することが予測されるが,静脈側で含有製品の再資源化や廃棄を通じた排出が当面継続する見込みであり,引き続きその実態把握が必要である。DecaBDE の代替物使用の臭素系ダイオキシン類の排出への影響についても,今後の排出実態調査や関連研究で明らかにされることが期待される。また,臭素化ダイオキシン類の適切なリスク管理には,WHO と UNEP の専門家会合が指摘しているとおり,魚類・哺乳類毒性試験に基づく TEF を補完していく必要がある。

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© 2018 一般社団法人 廃棄物資源循環学会
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