2020 年 31 巻 1 号 p. 25-33
わが国からアジア途上国への民間投資をベースにした静脈技術の移転を対象に,現地風土への適合性,持続的な運営,定着可能性を加味した事業環境の概要について整理した。わが国の静脈産業が技術的あるいは文化・慣習的に相対的に優位にあり,現地で受容可能な条件提示と事業化の可能性が比較的高いと考えられる領域として,破砕・選別による建設廃棄物の再生資材化,熱処理・エネルギー回収,包括的な都市ごみ管理システム,有害化学系廃棄物の適正処理・資源化があげられる。一般的に日本型の技術・管理システムの強みであると考えられていた,長期の安定運転実績,システムマネジメントやリスク評価力への信頼性は,とりもなおさず,競合国に比べて低いコスト競争力や意思決定の遅さ等,海外技術移転時のわが国の弱みとも直結する。コスト競争力の分析と改善努力はもちろん必要であるが,わが国の静脈技術・管理システムの強みや利点をブランド価値として強調しつつ,競合国との比較で優位に立てるような事業を提案することが重要である。