抄録
パレスチナはイスラエルとの長い間紛争状態にあり,これまで廃棄物管理行政とその適正な履行にさまざまな問題を抱えてきた。しかし,2000 年代後半から,廃棄物収集が普及し,3 つの埋立地も稼働するようになった。埋立地は世界銀行や日本が建設し,構造や運営はそれぞれ国際的な基準に従うものである。ただし,実際にはさまざまな課題が生じており,埋立地の適正管理を実現するマニュアルが求められていた。本稿では,JICA プロジェクトにおいて筆者が作成した埋立地環境監査マニュアルについて記述した。廃棄物埋立地に関する基準や指針が存在しない状況で,初めに監査を実施する上での基準を作る必要があった。ただし,乾燥地であるパレスチナでは,各国の基準を安直に引用することは難しく,さまざまな工夫が必要であった。特に,浸出水管理,環境モニタリング,安定化,覆土実施,悪臭等については,こうした地域の特性に応じた指標づくりが必要である。