抄録
使用済みリチウムイオン電池からコバルト,ニッケル,銅等を回収するための分離プロセスを概観した。現在リサイクルプロセスの主流となりつつある焙焼プロセスが,安全上,また分離の効率上,重要な役割を果たしていることを示した。さらに,粉砕や物理選別からなる物理的分離プロセスによって,ブラックマスと呼ばれる正極活物質と,銅,鉄,アルミニウムに分離され,分離された正極活物質はさらに酸浸出や溶媒抽出によってコバルトやニッケルに分離されるフローを紹介した。また,サーキュラー・エコノミーの概念にもあるように,内側の資源循環ループを創成すべく焙焼なしの分離プロセスが検討されていることを紹介するとともに,筆者らが取り組んでいる電気パルス法によるアルミニウムと正極活物質粒子との分離技術開発を紹介した。