廃棄物資源循環学会誌
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33 巻, 3 号
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巻頭言
特集:リチウムイオン電池の資源性と将来展望
  • 山末 英嗣, 光斎 翔貴
    2022 年 33 巻 3 号 p. 175-180
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル フリー
    次世代自動車の普及に伴い,リチウムイオン電池 (LIB) を代表とする車載用バッテリーの需要が増加している。車載用リチウムイオン電池の製造に伴う鉱物資源の影響をライフサイクルの視点から評価している研究は増加しつつあるが,岩石圏の改変まで考慮した例はほとんど存在しない。本稿では,車載用リチウムイオン電池の製造について,採掘活動量を定量化できる指標である 「関与物質総量 (TMR)」 を用いて評価した結果について報告する。
  • 所 千晴
    2022 年 33 巻 3 号 p. 181-187
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル フリー
    使用済みリチウムイオン電池からコバルト,ニッケル,銅等を回収するための分離プロセスを概観した。現在リサイクルプロセスの主流となりつつある焙焼プロセスが,安全上,また分離の効率上,重要な役割を果たしていることを示した。さらに,粉砕や物理選別からなる物理的分離プロセスによって,ブラックマスと呼ばれる正極活物質と,銅,鉄,アルミニウムに分離され,分離された正極活物質はさらに酸浸出や溶媒抽出によってコバルトやニッケルに分離されるフローを紹介した。また,サーキュラー・エコノミーの概念にもあるように,内側の資源循環ループを創成すべく焙焼なしの分離プロセスが検討されていることを紹介するとともに,筆者らが取り組んでいる電気パルス法によるアルミニウムと正極活物質粒子との分離技術開発を紹介した。
  • 橋本 英喜
    2022 年 33 巻 3 号 p. 188-195
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル フリー
    自動車メーカー各社による製品電動化の加速により今後相当量の高電圧バッテリーが必要になってくる。そのような中,リチウムイオン電池 (以下,LiB) は有力候補であり,既にハイブリッド車 (以下,HEV) に大量に搭載されている。
     今後 2023 年頃には HEV 上市から 10 年が経過し,それらが商品としての寿命を終え,大量廃棄時代を迎えようとしている。その際に予想される社会環境側面と資源側面双方のリスクを回避すべく,本田技研工業 (株) は LiB の適正処理の手法として,低コストかつ低消費エネルギーな分解・材料分別回収および希少資源のニッケル (Ni) コバルト (Co) 合金再資源化技術を,東北大学 柴田悦郎氏による学術指導のもと,松田産業 (株) と日本重化学工業 (株) とともに開発してきた。今回はその開発に向けた検討内容について報告する。
  • 小松 浩平, 境 健一郎, 飯野 智之
    2022 年 33 巻 3 号 p. 196-203
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル フリー
    2050 年カーボンニュートラル必達のためには蓄電池 (LIB) を最大限活用する必要があるが,素材の開発やリサイクル等の資源循環を含めた電池サプライチェーン全体の強化が必須となる。LIB の処理においては,発火等の安全面での懸念がある他,適切な処理をしないと金属資源を回収できないことから,安全で効率的なリサイクルシステムの構築が鍵となる。太平洋セメント (株) (当社) と松田産業 (株) は 2011 年よりセメント製造設備を活用した LIB のリサイクル技術の開発を進めており,2017 年には当社グループ会社である敦賀セメント (株) 内に焙焼設備を併設し,世界初となるセメント製造工程を活用した実証試験を開始した。2020 年からは産業廃棄物として排出される LIB のリサイクル事業を実施しており,これまでに 40 種を越える車載用の大型 LIB や定置用 LIB を焙焼した。今後も本システムのさらなる規模拡大による『低環境負荷処理』『金属資源循環』を通じ,LIB の資源循環に貢献したい。
  • ――EUのリチウムイオン電池関連制度を中心として――
    齋藤 優子, 白鳥 寿一
    2022 年 33 巻 3 号 p. 204-213
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル フリー
    リチウムイオン電池 (LIB) は今後ますます市場拡大が見込まれ,将来の廃棄量増大が懸念されることからその資源循環のあり方に国際的な関心が高まっている。そうした中で近年,欧州連合 (EU) ではサーキュラーエコノミーを目指した資源循環やカーボンニュートラル推進と関連づけたリチウムイオン電池にかかわる制度の促進の動きがみられる。
     本稿では EU の電池関連制度の変遷を概観し,フランスの電池指令の運用実態を事例として紹介する。
  • 寺園 淳
    2022 年 33 巻 3 号 p. 214-228
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル フリー
    近年,リチウムイオン電池は多くの電気製品や自動車に使われており,日常生活に欠かせないものとなっている。一方で,粗大ごみ・不燃ごみを処理する一般廃棄物処理施設やリサイクル施設での火災等が増加している。リチウムイオン電池は資源有効利用促進法に基づく自主回収の対象ではあるが,対象外の品目,電池一体型製品,回収率の目標がないことなど,多くの課題がある。リチウムイオン電池のマテリアルフローに関しては,年間排出量約 1.6 万 ton (2019 年) とする環境省推計がある一方,排出先の情報が限られており,処理施設に混入する量の推計精度を向上させる必要がある。火災等の発生を背景として,環境省は排出状況や自治体の先進事例を調査して 「リチウム蓄電池等処理困難物対策集」 をとりまとめ,経済産業省でも資源有効利用促進法の在り方に関する検討を行なってきた。今後の課題として,安全確保を考慮した回収の責務と意義の見直しの必要性を論じた。
  • ――電池イノベーションの指針として――
    八尾 健
    2022 年 33 巻 3 号 p. 229-236
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル フリー
    電池は身近にありながら,その原理がよく知られているとはいえず,ブラックボックス化しており,これが電池イノベーションの方向を迷わせる原因となっている。その観点から,まず電池発電の原理について解説する。そこから,「反応するものは何でも電池になる」 ことがわかる。電池の成否を決めているのは 「実用性」 であり,その要件には,起電力や充放電サイクル寿命や安全性,さらにはコストやリサイクル等が含まれる。「実用性」 の要件は非常に厳しく,歴史的にこれまでごくわずかな種類の電池が実用化したに過ぎない。電池各種について性能を比較し,その長所と短所を実際の用途とすり合わせながら,最も適合するものを,適材適所に選択していくことが,重要である。新たに開発された高性能鉛蓄電池は,用途によっては,リチウムイオン二次電池に置き換わる可能性を有している。以上の議論を総合して,電池イノベーションの目指すべき方向について提案する。
会議報告
環境省・廃棄物資源循環学会共催シンポジウム報告
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