2025 年 36 巻 2 号 p. 147-156
福島第一原子力発電所事故により発生した放射性セシウム(Cs)によって汚染された可燃性廃棄物は,焼却および熱的減容化を経て,溶融スラグおよび放射能濃度が高い熱処理飛灰として中間貯蔵施設内に貯蔵されている。熱処理飛灰は中間貯蔵後に県外最終処分を行うため,飛灰安定化体の放射能濃度や溶出特性に応じた最終処分施設構造と安全性評価手法を確立する必要がある。本稿では,既存の産業廃棄物遮断型最終処分場や低レベル放射性廃棄物ピット処分施設の封じ込め構造,安全性評価の考え方を参照した上で,熱処理飛灰安定化体の処分システムの設計においては,人工・天然バリアの収着力を最大限利用し,安全な放射能レベルに減衰するまで生活環境への移動を遅延させることが合理的であることを示した。次に,最終処分施設の人工バリアとして適用が想定されるコンクリートやベントナイト混合土を対象とする,高濃度塩の含有等,安定化体の性状を踏まえた放射性Csの封じ込め性能に関する検討状況を報告し,安定化体の適正な最終処分に向けた今後の課題を整理した。