中間貯蔵施設周辺地域における生物モニタリングを行い,当該地域の自然環境の現状について調べるとともに,福島第一原発事故による生態系サービスの変化についても評価した。ほ乳類のカメラトラップによる調査の結果,中間貯蔵施設周辺地域では10種の動物が観察された。ホンドタヌキ等の里山の生物が他の地域に比べ多く観察されたことからこの地域では里地里山の環境が維持されていることが示唆された。また,アカトンボの一種であるノシメトンボが中間貯蔵施設地域で高い頻度で観察されたことから,この地域では水場を利用する昆虫類が維持できる環境にあることが推察された。生態系サービスのうち供給サービスでは,農林水産業に係る指標のうち,水稲,麦類・大豆,畜産,海面漁業において,避難地域内外ともに震災によって著しく減少し,特に避難指示区域内ではいまだに回復していない状態であった。一方で,調整サービスは震災前後で大きな変化がみられなかった。