2016 年 26 巻 3 号 p. 125-131
結核は、結核菌によって引き起こされる再興性の感染症である。近年では、多剤耐性結核菌や既存の抗結核薬のほとんどに耐性を示す超多剤耐性結核菌の拡大が、治療をさらに困難にしている。また、HIV感染の蔓延による結核との重複感染も大きな問題である。このような状況下にもかかわらず、40年間、新しい化学構造と作用機序を有する新規抗結核薬は一剤も開発されなかった。筆者らはニトロイミダゾオキサゾール骨格が抗結核作用を示すということに着目し、in vitroでの抗菌力と結核菌感染マウスを用いたin vivo試験の結果を指標に、2位の側鎖部分を中心に合成展開し、誘導体の最適化を行った。その結果、変異原性を示さず、強力な抗結核活性を示す化合物群を見出し、多剤耐性肺結核治療薬Delamanidを創製した。