2020 年 30 巻 1 号 p. 25-29
アルツハイマー型認知症等の中枢神経系疾患の治療薬を開発するためには、薬理活性の高い候補薬物を見出すことに加えて、それらを効率的に病巣である脳内へと送達する手法を確立することが重要である。血液脳関門(BBB)を経由することなく、投与部位から脳へと直接薬物を移行させる手段として、経鼻投与法(Nose-to-Brain薬物送達法)が近年注目されている。本稿では、鼻腔および鼻粘膜の構造や脳への輸送機構に基づくNose-to-Brain薬物送達法の課題を述べるとともに、薬物の脳移行性を高める薬物送達(DDS)戦略を解説する。さらに、鼻腔から脳への薬物輸送過程における最大障壁である鼻粘膜透過性を向上させるために筆者らが開発してきた、細胞膜透過ペプチド(CPPs)併用経鼻投与法の有用性についても紹介する。