2022 年 32 巻 4 号 p. 190-194
炎症性腸疾患(IBD)は、下痢、血便などの症状を引き起こす腸管の慢性炎症性疾患であり、狭義には潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)を指す。IBDの患者数は世界的に増加しており、日本ではUCが約22万人、CDが 約7万人にも及ぶ。その治療には、重症度に応じて5-aminosalicylic acid(5-ASA)製剤、ステロイド系抗炎症薬、抗TNF-α抗体などの抗体医薬品が用いられる。抗体医薬品は低分子医薬と比較し高額であること、使用時間の経過とともに治療能力が低下し、投与量の増加や治療方針の変更が必要となる場合がある。このような背景から、新たな作用機序に基づくIBD治療薬が求められている。本稿では、レチノイドX受容体を標的としたIBD治療薬の開発研究の一例を紹介する。