2023 年 33 巻 4 号 p. 158-164
RNAを標的とした低分子創薬研究が加速している。ヒトゲノムの解析が始まる以前から、RNAが創薬標的となる可能性についてはたびたび指摘されていたが、残念ながらわが国ではRNAを標的とした低分子創薬研究は重要視されてこなかった。筆者の研究室では、「核酸に結合する低分子が生体内の機能発現制御に関与しうる」という事実を一つでも多く提示し、アカデミアのみならず産業界においても、核酸標的低分子創薬の可能性を感じ取ってもらうこと、さらには、わが国の製薬企業にRNA標的低分子創薬に向けた最初の一歩を踏み出していただけるきっかけとなることを目標としてきた。本稿では、筆者のこれまでの研究を紹介するとともに、現在多くの人々が注目しているRNA標的低分子創薬の課題とその可能性について私見を述べたい。