MEDCHEM NEWS
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33 巻, 4 号
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巻頭言
創薬最前線
  • 中谷 和彦
    2023 年 33 巻 4 号 p. 158-164
    発行日: 2023/11/01
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル 認証あり
    RNAを標的とした低分子創薬研究が加速している。ヒトゲノムの解析が始まる以前から、RNAが創薬標的となる可能性についてはたびたび指摘されていたが、残念ながらわが国ではRNAを標的とした低分子創薬研究は重要視されてこなかった。筆者の研究室では、「核酸に結合する低分子が生体内の機能発現制御に関与しうる」という事実を一つでも多く提示し、アカデミアのみならず産業界においても、核酸標的低分子創薬の可能性を感じ取ってもらうこと、さらには、わが国の製薬企業にRNA標的低分子創薬に向けた最初の一歩を踏み出していただけるきっかけとなることを目標としてきた。本稿では、筆者のこれまでの研究を紹介するとともに、現在多くの人々が注目しているRNA標的低分子創薬の課題とその可能性について私見を述べたい。
WINDOW
ESSAY
  • 金 倫基
    2023 年 33 巻 4 号 p. 170-175
    発行日: 2023/11/01
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル 認証あり
    腸内細菌叢(腸内マイクロバイオータ)の構成異常(ディスバイオーシス)が多様な疾患と関連していることが、近年数多く報告されている。実際に、腸内ディスバイオーシスの改善が、疾患の治療や予防、病態軽減に結びつく可能性が示唆されている。そのため、腸内環境(マイクロバイオーム)を改善することにより、疾患を治療するマイクロバイオーム医薬品の開発に取り組む企業が世界中で設立されている。マイクロバイオーム医薬品の開発は、過去10年間で大きな関心を集めてきた。しかし、最近の臨床的および規制上のサクセスストーリーがある一方で、さまざまな理由から、複数のマイクロバイオーム創薬企業で事業の再編や見直しも起こっている。そこで、本稿ではマイクロバイオームに焦点を当てた創薬研究の開発状況について、筆者自身の経験も交えながら論じたいと思う。
  • 五十嵐 進, 渡辺 俊博
    2023 年 33 巻 4 号 p. 176-180
    発行日: 2023/11/01
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル 認証あり
    2010年代から日本の製薬企業はオープンイノベーションの進展を認識し、化合物ライブラリの共同購入、共同構築あるいはビルディンクブロック(BB)の共同利用を目的とした創薬コンソーシアムが設立された。キシダ化学株式会社の創薬支援事業は、「すべてはお客様の研究開発のために」をスローガンとしてケミカルバンク事業からスタートし、これまでに複数の創薬コンソーシアム活動に参画している。本稿では、それら創薬コンソーシアムの特徴ならびにキシダ化学の取り組みについて紹介する。
DISCOVERY
  • 山下 泰信, 高田 悠里, 伊藤 幸裕, 鈴木 孝禎
    2023 年 33 巻 4 号 p. 181-186
    発行日: 2023/11/01
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル 認証あり
    ヒストン脱アセチル化酵素8(HDAC8)は、亜鉛依存性HDACの一つであり、コヒーシンなどの非ヒストンタンパク質の脱アセチル化を触媒する。HDAC8は触媒機能だけでなく、STAT3やCREBなどの転写因子と相互作用する足場機能を有し、遺伝子発現を高度に制御している。また、HDAC8は、成人T細胞白血病など、種々のがんの増殖に関与しており、抗がん剤の分子標的としても興味深い。そのため、HDAC8の触媒機能を阻害する従来の酵素阻害薬や、触媒機能と足場機能の両方を阻害することが可能なタンパク質分解誘導薬PROTACは、抗がん剤として期待される。このような背景から、筆者らは、HDAC8に対する創薬研究を展開してきた。本稿では、筆者らが実施してきたクリックケミストリーによるライブラリー構築を活用したHDAC8選択的阻害薬の同定とその構造最適化、さらに、見出したHDAC8選択的阻害薬のPROTACへの展開について紹介する。
SEMINAR
  • 玉村 啓和
    2023 年 33 巻 4 号 p. 187-192
    発行日: 2023/11/01
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル 認証あり
    2019年末に中国・武漢で発生したSARS-CoV-2を原因ウイルスとする新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界中に甚大な災禍をもたらし、3年半以上経った今もなお、感染が完全には終息していない。筆者らの研究室では以前から、同じRNAウイルスに属するHIVに関して、抗ウイルス剤の創製研究を行ってきた。そこで、コロナ禍において治療薬が求められるなか、筆者らのHIV研究を生かし、抗SARS-CoV-2剤の創製に取り組んだ。その結果、保存性が高いメインプロテアーゼを標的とした阻害剤の創製に成功した。本研究で創出した阻害剤は、臨床で使用されているnirmatrelvirやensitrelvirよりも強い活性を有しており、変異株に対応可能な治療薬の開発へ展開できる可能性がある。
  • 中島 吉太郎, 山口 圭一, 後藤 祐児
    2023 年 33 巻 4 号 p. 193-198
    発行日: 2023/11/01
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル 認証あり
    透析アミロイドーシスは人工透析治療患者に特異的に発症する全身性アミロイドーシスである。この疾患は、β2ミクログロブリンの異常凝集体であるアミロイド線維が原因であることが知られているが、その発症機序について未解明の事柄が残る。本稿では、透析患者の血清検体がβ2ミクログロブリンのアミロイド線維形成反応に及ぼす影響を独自開発した超音波アミロイド誘導装置を用いて解析し、この疾患の発症リスク因子について探索した結果を紹介する。また、この研究の結果を通して、現在のアミロイドーシスに対するいくつかの予防・治療戦略について考察し、生体内でのアミロイド線維形成反応を物理化学的な観点から見たときに、どのような戦略がアミロイドーシスの根絶にとって有効と考えられるのかを論じる。
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