2024 年 34 巻 2 号 p. 80-87
生体内には数千種類を超える酵素が存在し、これらの活性異常が疾患と関わる例が数多く知られている。一方で、疾患と機能の関わりの理解が進んでいない酵素は数多く存在し、筆者らは、がんをはじめとする疾患における酵素活性の変化を網羅的に解析し、疾患と関わる活性異常を新たに見出すことを目指す「enzymomics(enzymeのomics)」研究を進めてきた。近年、翻訳後修飾、タンパク質間相互作用などによって多様な分子種を生成するタンパク質の解析において、個々の分子種「proteoform」の違いを区別して機能解析を行うことの重要性が示唆されているが、疾患と関わるproteoformレベルの機能異常を見出すことが可能な方法論として、1分子レベルのタンパク質機能解析を可能とする技術を用いて、疾患と関わる血中の酵素活性異常を見出すことを目指した研究についてご紹介させていただきたい。