2020 年 51 巻 6 号 p. 669-677
わが国では年々増加している在住外国人との多文化共生が進められている. 本稿では, 外国人だけでなく, 貧困家庭やひきこもりなど, 地域で困難を抱える人の持つ背景を理解したり, 地域のリソースを可視化したり, 医学教育のコアカリキュラムの一つである健康の社会的要因 (SDH) を学んだりするために役立つツールとして, 「地域に根差したインクルーシブな開発 (Community-based Inclusive development : CBID) 」とその概念を可視化したマトリックスを紹介する. 医学教育モデル・コア・カリキュラムにも含まれるSDHについての解説, CBRマトリックス作成の歴史的経緯と, 筆者たちによる地域での活用実践やマトリックスをつかった医学部における教育実践を紹介する.