抄録
人々の行動をより環境支持的にするには,環境問題に関連する態度要因を理解する必要がある.我々は環境評価インベントリ(EAI)の日本版を作成して,大学生に実施し,彼らの環境態度の構造を検討してきた.EAIは,「脅威・評価・対処」という簡潔な心理的ストレスモデルを採用している.EAI日本版は,地球環境変化のハザード(環境問題)を含む28の項目と,9つの評価尺度で構成されている.分析の結果,EAIの尺度は高い信頼性を立証した.また,尺度の因子分析は,環境態度が3次元からなることを示した.EAIのオリジナルの尺度である,「自己への脅威」「環境への脅威」「個人的コントロール」はそれぞれの次元で独立していた.EAIは洗練された因子的妥当性を示した.EAI日本版において付加された,環境支持的行動のコミットメントを表現する「ライフスタイル変化」尺度を従属変数,オリジナルの3尺度を独立変数とする重回帰分析は,高い重相関係数を示し,「環境への脅威」尺度と「個人的コントロール」尺度は有意な予測変数となった.しかし「自己への脅威」尺度は有意にはいたらなかった.環境問題の認知構造が,態度から行動への転換において演じる役割が議論された.