人間・環境学会誌
Online ISSN : 2432-0366
Print ISSN : 1341-500X
日英の庭の弁別に関する環境推論
羽生 和紀山下 雅子大森 宏
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ジャーナル オープンアクセス

2007 年 10 巻 2 号 p. 1-10

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抄録
人がある環境に直面した際には、1)環境の持つ物理的な特性、特に形態・景観に対する直接的な心理的反応をすること加えて、2)その背後に存在する状況や意味の読み取りを行っている。とくに表面的な形態や特性の背後にある環境の状態,役割,地位,機能のような意味を読み取る過程は環境推論とよばれる。本研究は、日本と英国にある個人の庭の写真から、その庭がどちらの国にあるのかを弁別する環境推論の過程を、Brunswikのレンズモデルの枠組みを援用して検討することを目的とした。実験参加者は男女大学生44名であり、刺激は日本にある個人の庭の写真17枚と英国にある個人の庭の写真17枚であった。参加者は、ランダムに一枚ずつ提示された庭の写真を17の評定尺度で評定した後に、すべての庭を日本にあると思う庭と英国にあると思う庭に弁別した。結果は、1)日英の庭の間には、知覚的・物理的、情動・認知的特徴において違いがあり、2)推定された所属国に対する評定においても、ほぼ一致する特徴に違いが見られ、3)その結果、国の弁別は80%以上が正確であったことが示された。最後に、この研究の限界と今後の研究の可能性が議論された。
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© 2007 人間・環境学会
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