抄録
人の生命を脅かし環境を破壊する自然災害は、環境デザインの研究者が改善に向けて取り組むべきテーマである。21世紀に入ってから既に大小さまざまな災害が起きている。それによってもたらされる被害の深刻さはこれまでになく増大している。それは我々の社会がますます複雑になり、相互に関連し、そして一定のリスクや不確実性を内包した新しい技術に依存するようになってきたからである。2011年東日本大震災では津波も伴って多数の犠牲者を出した。今日の地域コミュニティーにおいて住民相互の交流が不十分であることも社会の脆弱性を高めている。このような状況において、安全でレジリエントな社会を構築するためには、適切な研究と議論によって生み出される教えの蓄積が重要である。このような考えに基づき、2013年6月にロードアイランドのプロビデンスで開催された第44回EDRA(環境デザイン学会)の年次大会において、「自然災害に対して安全でレジリエントな社会をめざして」と題するワークショップを開催した。本特集はその成果をまとめ、災害からの復興において生じている問題について、さまざまな観点から論じたものである。