抄録
本稿では、津波時における避難行動に環境認知が与える影響を考察した研究について報告する。東日本大震災の前と後に千葉県御宿町において行なったアンケート調査結果を比較したところ、実際に避難した人は事前の調査で示された意向に反して少なく、避難したかどうかは自宅の空間的な位置によって大きく異なっていた。そこでスケッチマップ調査を行なった結果、道路と海岸線の位置関係の歪みや標高の過大評価など住民が認知している環境は実際の空間とずれている側面が見られ、危険な避難行動の一因となっていることが分かった。これらの結果は、有効な津波避難計画を立てる上で、住民の環境認知を理解することが重要であることを示唆している。