2002 年 7 巻 2 号 p. 11-20
方向推論がどのように行われているのかを調べることを目的に,途中にさまざまな角度の曲がり角(0,15,30,45,60,75,90度の7通り)が1回ある通路を用いて,入口で提示された方向を出口でどれだけ正確に回答できるかについて測定する実験を行った.本研究の実験環境においては,方向を考える際に手がかりとなる情報が乏しく,被験者は自分の身体を基準にして方向を推論することになる(すなわち,自己中心的参照系における推論となる).そのことを考慮して,仮説として(i)方向推論は,参照軸を利用した定性的推論になる;(ii)方向推論は,常に進行方向を基準に,そこから正解方向までの回転角(これを定位角と呼ぶ)を想起することで行われる,の2つを考えた.さらに,仮説(i)については,ここで用いられる参照軸が4方向(身体の前-後,左-右)からなるものか,これに斜め方向を加えた8方向からなるものかについて検討した.実験の結果,両方の仮説が支持され,かつ参照軸の構成は8方向からなることが明らかになった.