抄録
居住環境が子どもの発達に影響を及ぼす経路として,早川・岡本(1993)は,直接的影響と間接的(養育者への影響を介する)影響の二種類を挙げている.この「間接的影響」を検討するため,育児中の母親から得られた回答をもとに,居住環境が母親の健康状態を媒介して育児態度に及ぼす影響を想定したモデルを検証することを本研究の目的とした.東京都内および埼玉県在住の母親に対し,居住環境,健康状態,育児態度などを尋ねる項目から構成された質問紙を配布し,回答が得られた653人の結果を検討した.共分散構造分析を用いて,居住環境が母親の健康状態および育児態度に及ぼす影響を表した仮説モデルを分析した結果,居住環境は健康状態を媒介して育児態度に影響を及ぼすと仮定して設定したモデルが最も良い当てはまりを示した.この分析結果から,居住環境は母親の健康状態を介して育児に及ぼしていること示唆され,今後,育児環境について考えていく上で,この間接的影響の重要性が明らかとなった.