人間・環境学会誌
Online ISSN : 2432-0366
Print ISSN : 1341-500X
地上と地下経路における距離感、及び空間イメージの差異とその要因に関する基礎的研究
曲山 健治赤木 徹也安原 治機
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ジャーナル オープンアクセス

2006 年 9 巻 2 号 p. 21-29

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抄録

新宿駅を中心として構成される地上と地下の各15経路における実歩行実験を行い、地上経路と地下経路における人間の距離感、及び空間イメージに関する諸特性とその関係性を検討した結果、以下のことが明らかとなった。1)人間には各自固有の距離感が存在し、その距離感は地上よりも地下で認知しにくくなる。また、街の基点となる場所から離れるよりも向かう方が距離感を認知しやすくなる。ただし、この傾向は街の基点が、人間に対してどの程度のvalence(誘意性)を有しているかによって異なる。2)空間イメージに関しては、地上か地下かよりもむしろ、街の基点となる場所に向かうか離れるかかが重要な要素となる。そして、街の基点となる場所におけるvalenceの程度が、空間イメージにも影響する。つまり、valenceが強いほど空間イメージは一元的になり、valenceが弱いほど多元的になる。3)認知距離と空間イメージの関係性に基づく地上と地下の認知のしやすさについても、valenceが大きく影響する。空間的な要素が豊富である地上では、valenceとの関係が強い環境要因が認知のしやすさの尺度に用いられているのに対して、空間的な要素が乏しい地下では、空間の物理的な特性と関係が強い環境要因が認知のしやすさの尺度に用いられ、valenceに関係する環境要因は認知のしやすさの度合に影響を与えているに過ぎない。

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© 2006 人間・環境学会
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