抄録
博物館の一つの形態である科学館での数学教育の現状と将来の課題について述べる。科学館とは,実験装置や模型を来館者自ら操作して科学や技術の原理,原則を理解することを目的にした施設で,わが国にはおよそ80もの施設があると言われている。欧米の科学館には優れた数学展示が数多いが.わが国の科学館には数学展示はほとんど見られないのが現状である。難解さを印象づけるというのが専らの理由である。一方,青少年を中心に数学を含めた科学技術離れが進んでおり,学校外での科学技術教育の重要性が叫ばれている。本稿では,このような視点から科学館での数学展示の必要性を述べ,今後,わが国の科学館に数学展示を導入するために必要と思われる二, 三の問題点について論じる 。