抄録
有理数を既知として、有理数から実数への数の拡張には、デデキントとカントルの方法がある。前者は「有理数の切断」、後者は「有理数の基本列」の概念が導入され、数の世界の拡張が理論化されている。これらは完璧な理論であり、その結果として「実数の連続性」等の意味が明らかにされる。しかし、その理解には、記号論理も含め一般集合論の知識と経験が必要であり、高等学校のレベルで容易に理解できるものではない。おそらく、現在では実数論は、数学を専門とする学生のみが大学で学習しているのではなかろうか。しかしながら、我々の実生活と「数」の関わりを考えると、少なくとも理数系の学生にとって、これは教養の一端として学習して欲しい知識である。そのためには、デデキントやカントルほど理論的でなくても、中学校や高等学校からスパイラルに扱い、高・大のギャップを出来るだけ少なくしたうえで、大学の初年度で終わるような教材構成が出来ないものかと考えた。本論文では、「無限小数」を基本概念とし実数論の展開を中・高・大をまたいだ学校教育教材の立場から開発を試みる。