抄録
質的研究法は近年の英語教育学研究の分野で注目されているが,その一方で評価基準が明確に提示されているとは言いがたい。そこで本論では構造構成主義に基づいた質的研究の評価基準を提示し,それを用いた研究例を提示する。具体的には,まず本論での質的研究の定義を行った後,質的研究の評価方法を量的研究と比較しながら概説し,量的研究と質的研究の両方に適用可能なアプローチとして構造構成主義を紹介する。特に近年は量的研究と質的研究を相互補完的に用いるミックス・メソッドが注目されているので,本論では量的研究と比較しながら質的研究の評価基準について述べる。次に構造構成主義が提示する科学性の担保する原則を基に質的研究の評価基準の具体例として,KJ法の評価基準を提示する。最後にKJ法を用いた動機づけ研究において,評価基準に則った研究例を提示する。