衛生動物
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閉鎖環境及び自然環境に於けるドブネズミ集団の動態 : ネズミの生態と駆除に関する研究第 3 報
長田 泰博田中 英文佐藤 金作
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1959 年 10 巻 1 号 p. 54-59

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抄録

1)閉鎖環境と自然環境に於けるドブネズミ(Rattus norvegicus)集団の構成や, 構成の動態を観察し, それによつて自然集団でみられる動態が, 飼育環境下の集団に於てはどうか検討した.2)閉鎖環境に於ける観察は, 野外ネズミ飼育場内で行われ, その結果最優位の雄1頭及び雌多数, 及びこの群れから生れた雌雄の子鼡より成る一集団を構成した.一方自然環境に於ける観察は, ある畜舎に棲息するものについて行われ, その結果屋内の集団が雌雄の成体及び子鼡を含む三群より成ることを知つた.3)飼育場内に出来た集団には, 最優位の雄により他集団から移入した雄は排斥され, 雌のみ受け入れられた.なお同じ集団内では最優位の雄と雄子鼡, 及び同集団内の雄子鼡間には争いは生じない.このことから, 自然集団内に最優位の雄を欠く場合や集団が同じ群れから出発している場合など, 異集団間或は同集団内で, 雄が争いもなく交流し共存することもあるのではないかと考える.4)畜舎に於ける集団の中, 一方の群のみその勢力を拡大し, 他方は余り成長しないことを見出し, 群間にもかなり変動のあることを知つた.又, 半棟のみに薬剤を配置し, 集団の受ける影響を調べた.毒餌の配置された側の集団は完全に駆除されたが, 他方の集団にはほとんど影響を及ぼさなかつた.5)以上の結果, 自然環境及び閉鎖環境に棲息するドブネズミ集団が, 雌雄成体及び子鼡より構成される一集団として, 動態を示すことの一つの手掛りを得た.なお両環境に於ける集団の示す動態の関連については, 更に今後の機会に報告する.

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© 1959 日本衛生動物学会
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