衛生動物
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イエバエ, キンバエ類の分散飛翔に関する記号放逐実験
緒方 一喜永井 尚三郎小清水 憲雄加藤 幹夫和田 明
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1960 年 11 巻 4 号 p. 181-188

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抄録

1959年9〜10月, 川崎市北部郊外において, イエバエMusca domestica vicinaとキンバエ類(大半はPhaenicia cuprina)の記号放逐分散実験を行つた.マーキングはP^<32>を餌に混入し, 放逐点で捕集したハエ成虫になめさせる方法をとつた.1)記号放逐数は, イエバエ約14, 250匹, キンバエ類約600匹, その他約150匹である.回収は, 放逐点を中心に半径1kmの地域内に39カ所のトラップを配置して行つた.2)記号個体回収数はイエバエ456匹, キンバエ25匹で, 回収率はそれぞれ3.2%, 4.2%であつた.3)距離と分散の関係をみるとイエバエでは, 放逐点で347匹(76.0%), 100m帯で107匹(23.4%), 400m, 500m帯でそれぞれ1匹を回収した.キンバエ類は, 放逐点で4匹(16.0%), 100m帯で20匹(80.0%), 700m帯で1匹を得た.これらの多数活動範囲はさほど大きくない印象を受けた.方向と分散の関係をみると, 100m以遠でとれた3匹は, いずれも, 東西方向に走る街道筋で回収されている.北方向は, 幅250mの水田地帯に阻まれ, 南方は丘陵地帯が障壁になつて飛来が少なかつたのかもしれない.4)100m以内のトラップにおける記号個体の捕獲率の経日変化をみると, 放逐点では急激に減少したが, 100m帯では3日目と7日目の間の差は著しくなく, 拡散して行く様子がうかがわれる.16日目以降は全く回収できなかつた.5)色素法とアイソトープ法のマーキング方法の比較考察を行つた.一長一短あるが, 大量処理の場合はアイソトープ法がすぐれているように考えられた.

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© 1960 日本衛生動物学会
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