衛生動物
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下水溝に撒布したダイアジノン乳剤のアカイエカ幼虫に対する残効性
和田 明加藤 幹夫鈴木 猛
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1960 年 11 巻 4 号 p. 210-215

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抄録

1)川崎市内の下水溝に発生するアカイエカCulex pipiens pallens幼虫にたいして, diazinon 5%乳剤を, 水量にたいして原体0.5ppmの割合で撒布し, その残効性および, それに関連する効果の概要を求めた.2)薬剤撒布後卵塊数は減少の傾向を示し, 2〜3日後に最低になるが, 以後増大して, 6日後には, ほぼもとのレベルまで回復する.3)若令および老令幼虫は, 薬剤撒布の1日後にminimumに達した例がもつとも多いが, サナギは, 2日後にminimumに達した例がもつとも多い.4)この量のdiazinon撒布が有効であつた例について, 撒布してから再出現までの期間を求めると, 若令幼虫で平均4.2日(3.7〜4.6日, 信頼限界), 老令幼虫で7.1日(6.3〜7.9日), サナギで8.6日(7.8〜9.4日)になる.この結果から, この量のdiazinonの撒布では, 本来の残効性はほとんど認められないか, せいぜい2〜3日であり, また実際駆除にあたつては, 約1週間おきに撒布をくりかえすことが必要なことを知つた.5)実験地の条件別に, 薬剤撒布の効果を比較検討した結果, 構造がコンクリートであるか素掘りであるか, また草つきの多少は, いずれも効果にほとんど関係がないこと, 流れのある水域では, 効果が低い傾向が認められることを知つた.また, 深さが効果に影響を与えないことから, 下水溝の薬剤撒布は, 表面積を基準にするよりも, 水量を基準にする方がより合理的であることを推定した.

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© 1960 日本衛生動物学会
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