衛生動物
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各種昆虫の殺虫剤に対する抵抗性の研究 : 第 10 報イエバエの diazinon に対する抵抗性の発達と消失について (II)
安富 和男
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1962 年 13 巻 1 号 p. 63-66

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抄録
前報(衛生動物, 12巻2号)に引続き, 各地で採集したイエバエ群について, diazinonに対する抵抗性の発達, 及び消失について実験を繰返えした結果, 次の諸点が明らかになつた.1.茨城県鉾田町美原地区で採集したイエバエ群は, 6代diazinonで淘汰した場合, Topical applicationによる雌1頭当りの(LD)_<50>値が2.5098microgramにまで発達したが, その後の発達は顕著でなく, 15代の後でも2, 5317microgramであり, ほぼ発達の限界に達したようである.千葉県浜宿産イエバエ群でも, ほぼ同様な傾向が認められ, 5代後に1.1124microgram, 10代後に1.9146microgram, 15代後に1.9253microgramという(LD)_<50>値を示した.また, 袖ヵ浦産イエバエ群は, 採集当時, 感受性系統に近かつたが, 僅か1代の淘汰で, 0.2801microgramというRP系統とほぼ等しい(LD)_<50>値に発達し, 以後, 徐々に抵抗性が発達し, 5代目くらいでほぼ安定した傾向を示した.茨城県出島産イエバエ群は, 10世代の淘汰を行つても, 高槻系統の約5倍の(LD)_<50>値に到達したに過ぎなかつた.彦根産イエバエ群は, 8世代までの淘汰では顕著な抵抗性増大がみられなかつたが, 10世代目以後, 急激に抵抗性の発達が認められ, 15世代目には, 高槻系統に比べて, 約55倍のResistance ratioを示した.2.鉾田産イエバエ群, 茨城産イエバエ群などの抵抗性populationを, diazinonとの接触なしに, 累代飼育すると, 4〜5代目までは抵抗性が徐々に消失し, 以後はさほど低下せず, 20世代目まで経過しても, 高槻系統の約12倍程度のResistance ratioが認められた.
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© 1962 日本衛生動物学会
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