衛生動物
Online ISSN : 2185-5609
Print ISSN : 0424-7086
ISSN-L : 0424-7086
川崎市の浄化槽等におけるチカイエカの発生状況と駆除実験について
和田 明西条 良雄阿部 義昭鈴木 猛
著者情報
ジャーナル フリー

1964 年 15 巻 3 号 p. 187-192

詳細
抄録
チカイエカは近年多発の傾向をみせ, ようやく市民の間でも関心が高まつてきた.川崎市では昭和33年以降実施している蚊対策の基礎的調査の一環として浄化槽等のチカイエカの発生状況とこれに対する駆除実験を試みた.1.チカイエカは昭和34年初冬管内中心部の某ビル地下水槽に発生して以来, 管内周辺の地域に拡大している.2.主なる発生源は市内に広く普及している浄化槽や高層ビルの地下水槽であり, 管内2, 112件の中310件の浄化槽を調査したところ, その45.5%に発生をみとめた.地下水槽では21カ所中9カ所, 即ち42.9%に発生をみている.3.チカイエカ発生状況について, その要因を追究してみると, 形式別には, 基準型と特殊型と大別し, 基準型では27.6%, 特殊型では42.1%と後者の方に高率であることを示しているが, この理由については結論を得ていない.4.規模別には, 著るしい特徴は認められない.5.発生している浄化槽内の部位別には, 基準型と特殊型の場合差があり, 前者の場合には, 予備ろ過槽に多く, 後者の場合第2腐敗槽に多く発生を認めている.6.浄化槽の設置されている場所と, 人の居住環境との関係をみると, 非住居環境にむしろ高い発生を認め, チカイエカの発生は, 吸血源の有無との関係はない.7.駆除実験は, 5% diazinon乳剤, 5% Baytex粒剤の1ppm等の全面撒布, 部分処理の2方法について実験を試みたが, 全面撒布は, いずれの場合でも有効であり, 5% Baytex粒剤の部分処理による駆除では効果が期待できなかつた.しかし, 再発生までの回復期間および残効性等についての検討, 浄化能力に対する影響等については今後研究を続ける予定である.
著者関連情報
© 1964 日本衛生動物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top