衛生動物
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アカイエカの大量繁殖方法の検討
平社 俊之助
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1965 年 16 巻 1 号 p. 57-73

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抄録
アカイエカ幼虫の発育に関して餌の量, 飼育幼虫数および水の状態を変えて各種の実験を行つた.飼育容器は主に500cc容(水表面積57(cm)^2)ビーカー, 水300cc, 餌は実験動物飼育用固型飼料, 供試虫は産卵15時間以内のアカイエカ卵塊を用いた.水を全く代えず, 餌を最初に1回与えたものは, 卵塊30餌6g供試において水表面積1(cm)^2当り18匹の幼虫を発育させた例もあつたが一般には0から2匹の幼虫を発育させたに過ぎなかつた.水を代えず餌を等量に分け毎日与えたものは水表面積1(cm)^2当り3から6匹蛹になつたものが多くみられた.水と餌を1日おきに代えたものはさらに多数の幼虫を生育させ供試卵塊数が少ない区と餌を特に大量与えた区以外は水表面積1(cm)^2当り8から15匹程度幼虫を発育させている.また水と餌を毎日代えたものは各区とも, より多くの幼虫が発育し, 餌1日当り約6g, 卵塊50供試したものは1(cm)^2当り35.4匹の蛹を得た.そして一般に卵塊5から10個, 餌1日当り0.75g与えたものは1(cm)^2に対し10〜20匹内外の幼虫を発育させている.この結果より餌の量や供試卵塊数も, その飼育に大きな影響を与えているが, 水を代えることおよび餌を分けて何回も与えることの方がより重要な要因と考えられた.また, これら全ての飼育方法において餌が少なくなると幼虫期間は延長し, 過剰になると, この期間は最適なものと大きく変らず, ただ死亡する幼虫が多数みられた.これら, ここに行つた各実験より500cc容ビーカーで大量の幼虫を飼育する方法を要訳すると次の様になる.供試卵塊数10.餌は卵塊投入日約0.38g, 2日後0.38gまたは無供与, 3日後1.5g, 4日後より7日後まで毎日3g, 以後1.5ないし0.8g供与, 水は常に300ccまたは深さ5cmにし, 卵塊投入3日後までは不代, 3日後より毎日茶こし等のあみで水を全量代え, あみに残つた水不容の餌はそのまま次の飼育に加える.水を代える場合は常にきれいな別の容器を用いる.飼育温度は原則として25℃, 温度が上昇した場合は餌を上述した量より少なく, 低くなつた場合は多目に与える.
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© 1965 日本衛生動物学会
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