衛生動物
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浄化槽内に生育するチカイエカの駆除特に槽内微生物相に対する影響について
野口 圭子岩戸 武雄安富 和男朝比奈 正二郎
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1965 年 16 巻 2 号 p. 138-141

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抄録
(1)予備濾過槽内に発生するチカイエカを駆除する場合に, 殺虫剤の効果ばかりでなく, この下流に位置する酸化槽内の濾床微生物の浄化作用におよぼす影響を知る必要があるので一連の実験を行つた.(2) Diazinon 5ppm, malathion 5ppm撒布では濾床生物の総生物数が著しく減少し, 且つ生物相のバランスがくずれてくるので, 浄化機能に影響があつたと思われるが, malathion 1ppm, Baytex 0.25ppmの場合では生物相のバランスがくずれず著しい減少も見られないので影響はなかつたものと考えられた.(3)次に浄化槽内に投入する各種の殺虫剤のチカイエカ幼虫に対する効果を的確に把握するために実験室的並びに実地の殺虫試験を行つた.(4)深川系チカイエカ終令幼虫を用いた実験の場合, 優劣の順序はBaytex, Sumithion, diazinon, malathionで, 汲みおき水道水でも, 実地の予備濾過槽より採取した水でも大差がみられなかつた.(5)実験に用いた浄化槽においては常に流れがあるが, 生物試験の結果, 殺虫剤を投入した直後にくらべ, それが30分後には2〜5倍, 1時間後に, 10〜20倍にうすめられることが分つた.(6)直径30cmの金網かごを予備濾過槽に沈め, チカイエカ終令幼虫を投入して, 薬剤を撒布し, 流れのある状態での24時間後の致死率を見た.Diazinonの場合, 予備濾過槽の水量に対して0.5ppmで50%, 1ppmでも若干の終令幼虫が生残つたが, BaytexとSumithionでは0.25ppmの投入で100%の致死率がみられるので, 幼虫を駆除するのに最適と考えられた.またTechnical DDTでは10ppmでも66.9%の致死率しかみられなかつた.(7)成虫対策としてDDVPのResin stripを消毒槽に吊下げ, サランの網で通気孔を塞いだ場合, 24時間後に槽内の羽化成虫を死滅させることが出来た.
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© 1965 日本衛生動物学会
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