抄録
著者らは宮尾氏らによつて隠岐島で採集されたノミを調べ, その中にR. bilobaの含まれていることを確かめた.この個体の頬櫛は良く発達しており, 更に多数個体についての検討の必要性を痛感した.そこで1966年12月隠岐島での採集を実施し, 宿主相, ノミ相について次の知見を得た.1) 採集された宿主はオキヒミズ32, オキアカネズミ27, オキヒメネズミ14, ハツカネズミ1の4種合計74個体であつた.2) オキヒミズは陽地, 森林内を問わず, 広範囲に渉る採集場所で得られた.オキアカネズミ, オキヒメネズミは殆んど同一場所で採集されたが, 後者はより森林性であつた.3) ノミ相は貧弱で, わずかにP. nippon, N. sasai, R. bilobaの3種が記録されたにとどまつた.4) P. nipponの宿主はオキヒミズであり, N. sasaはオキアカネズミから, R. bilobaはオキアカネズミとオキヒメネズミから, それぞれ採集された.5) 隠岐島産のR. bilobaは形態的に九州産のものと相異せず, 島後産の標本にだけ見られた頬櫛の変異は個体変異と見做された.6) 隠岐島ではR. bilobaの分布が低地に及び, 個体数は必ずしも少なくなかつた.7) 隠岐島でのR. bilobaの記録は, 本州中国地方にも本種の棲息している可能性の大きなことを示したものと思われた.