日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
症例報告
術後管理に難渋した糖原病I型合併肝細胞癌の1切除例
出井 秀幸夏目 誠治千田 嘉毅奥野 正隆林 大介伊藤 誠二小森 康司安部 哲也三澤 一成細田 和貴清水 泰博
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2020 年 53 巻 2 号 p. 147-153

詳細
抄録

先天性代謝異常疾患である糖原病に肝細胞癌が合併することはまれである.今回,我々は肝切除後の術後管理に難渋した糖原病合併肝細胞癌の1例を経験したので報告する.症例は37歳の男性で,小児期に糖原病と診断されたが,成人を機にフォロー終了となっていた.CTで肝右葉を占める径11 cmの腫瘍を認め,造影動態から肝細胞癌と診断した.腫瘍は右,中肝静脈,下大静脈に広範に接しており,2回の肝動脈化学塞栓術を先行したところ,著明に縮小した.血管の圧排所見も改善したことから根治切除可能と判断し,肝右葉切除を施行した.画像上の全肝容積は2,805 mlと高度に腫大を認め,手術操作に難渋した(手術時間493分,出血量850 ml).術後は著明な乳酸アシドーシスを来したが,高濃度ブドウ糖点滴により改善した.術後6日目に左右下横隔動脈から出血し,動脈塞栓術により止血を得た.

Fullsize Image
著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top