衛生動物
Online ISSN : 2185-5609
Print ISSN : 0424-7086
ISSN-L : 0424-7086
Anopheles sinensis, A. lesteri の形態変異および強制交尾時における数種ハマダラカ雄の把握器の運動回数について
神田 錬蔵小熊 譲
著者情報
ジャーナル フリー

1976 年 27 巻 4 号 p. 325-331

詳細
抄録
Anopheles hyrcanus種群の種分化を追求する手始めとして, 日本の14ヵ所で採集されたA. sinensisおよび1ヵ所のA. lesteriから得られたF_1世代の乾燥標本のsubcostal pale spot (Sc p), fringe pale spot (F p)について変異を調査した。その結果, A. sinensisのF pは容易に消失してしまうが, Sc pは比較的安定であった。A. lesteriではF pは出現しにくく, Sc pが出現しやすい不安定な形質であることがわかった。A. sinensisでは今までに知られていないhumeral pale spot (H p)を有する個体が苫小牧, 遠軽から見出された。このH pはA. sineroidesのH pより幅が狭く不明瞭な場合も見られた。強制交尾時におけるハマダラカ雄の把握器の運動回数に種特異性が見出された。これは交尾行動に関してそれぞれの種が分化していることを示すものと考えられた。さらにA. sinensisの種内において苫小牧, 遠軽系統は他の系統とは有意に異なっていた。形態変異および雄の把握器の運動回数の調査から苫小牧, 遠軽系統がA. sinensisの種内で遺伝的に分化しているのではないかと考えられた。
著者関連情報
© 1976 日本衛生動物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top